愛しむ。

店先で紅玉を見つけるとどうしても連れて帰らずにはいられなくなってしまいます。

艶やかな深い紅色の美しさといい、他の林檎より小ぶりで丸い、コケシの頭のような愛らしさがそこにはあります。
先日、スーパーの果物売り場で紅玉を見つけました。手に取ると実は案外硬く締まっていましたが、季節外れなので味の期待はできません。そうわかっていながらやはり連れて帰らずにはいられませんでした。
台所の棚に並べいつまでも眺めていたいけれど、すぐにフカフカになって味が落ちてしまうのも紅玉の特徴です。父の好きなアップルパイになってもらう為に果肉を砂糖で煮、皮と身は少量の水で煮詰め、その色を移したジュースに。
また、別のものはジューサーにかけ、果汁を酒粕と合わせてアップルタイザーになってもらうことにしました。ジューサーに残ったカスは水と一緒にガラス瓶に入れ酵母を起こします。林檎酵母のパンになってもらうのです。芯は豆乳と合わせて発酵させヨーグルトに。全く捨てるところがありません。
紅玉。その色も、実も、皮も芯も、そこについている微生物さえも愛しくて。掌の紅い幸福を、五感のすべてで感じる今日この頃です。