アースになる

「あっ、この感覚」

砂浜に寝そべった瞬間、懐かしい感覚が甦る。

陽にさらされた砂浜の、湿り気を帯びた温もりは衣服を通り越し、皮膚を突き抜け、わたしの深いところで眠っていた感覚を呼び覚ます。
幼い頃の夏の日。海で遊び疲れた後、砂浜に寝そべり、冷えた身体を温めながら、うとうととまどろみのひと時を過ごしたものだ。そうやってわたしは地球を抱きしめ、地球はわたしにエネルギーを与えてくれた。わたしたちはいつもひとつだった。
大きくなって海で泳ぐこともなくなり、大地に横たわることもなくなり、感覚も記憶も大切なことは遠ざかって行った。目まぐるしく回転する世界の外側に。
けれど、ほんとうは遠ざかったわけでも、失ってしまったわけでもなく、わたしのなかにちゃんとおさめられていたのだった。
写真を撮ることを暫し忘れ、わたしは地球を、地球はわたしを抱きしめる。夏が訪れる前の、よく晴れた日。